薔薇とダイナマイト/若木未生


再読、シリーズ2作目。朱音がオリキに卵ぶつけられたり坂本がつきまとわれたり→桐哉とドラム→先生の昔のイザコザ→デビューシングルを思い通りにつくらせてもらうためにもタイアップ取ったり→シングル曲完成まで。音楽をつくることと、音楽以外のわずらわしいアレコレとの対比が効いてます。藤谷先生が出張ってる巻。尚の前途多難さがこのへんから既に…。こんなに早くに朱音は先生への気持ちに気付いたんだっけ。女としてバンドに加入することの葛藤がこのへんからちゃんと伏線張られてるのがわかる。登場人物みんなタガが外れてておいおいってなるけど、それも楽しい。音楽だけで話の軸を引っ張ろうと思ったら、どうしてもこういう人物の暴走と葛藤と揉め事になっちゃうよね。それを読んでて飽きさせないのが何気にすごい。

「うん……だから、いい音が録れるんだったらそれでも別にいいやって俺もショウタ君も一緒になって考えちゃうから、そのせいで我々の友情ってつづかないんだよね」
 藤谷先生はどうにもフォローのしようがないことを口走っている。……そこで納得されてもこっちが困る気がする。
「あの、続かないんだったら、細切れでもいいからなんとかしてください」
「細切れって16ビートくらいで?」
 あたしの言い方が可笑しかったらしくて、先生はひとりでくすくすウケてくださった。
(中略)
「けど、ずっとそんなんじゃ高岡君がボロボロになっちゃうよ」
 藤谷さんはそう呟いた。
(……そんなことないんじゃないかな)
 それくらいの覚悟なんて、いくらでもしてるんじゃないのかな。
 あの人だったら。
「ああ、歌わなくちゃ」
 両手で自分の顔の上半分、押さえて、藤谷さんは言い聞かせるみたいにくりかえした。
「歌わなくちゃ」