エデン/近藤史恵 ★★★★☆

 

あれから三年―。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を賭けた駆け引きに巻き込まれ、外からは見えないプロスポーツの深淵を知る。そしてまた惨劇が…。ここは本当に「楽園」なのだろうか? 過酷なレースを走り抜けた白石誓が見出した結論とは。

以前絶賛してたサクリファイス(感想→http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20071115#1195141416)の続編です。チカが今度はフランスのチームでツール・ド・フランスに挑む話。チカ、相変わらず謙虚でどこか冷めてて、なのに自転車には熱くて、今回も楽しくぐいぐい読みました。三週間も走るグラン・ツールの戦略とかも面白かったし、チーム内の軋轢の中で自分の信念を通そうとするチカを応援したくなった。そしてもうね、またしてもラストの種明かしがね…。今回は別チームの二人(期待の新星ニコラとその幼なじみドニ)のあいだに潜む行き違いだったので見えにくいんだけど、それでも充分衝撃的だった…。そこに至るまでの複線もちゃんと引いてあるし、ドーピングに関するフリとか、二人の関係とかニコラの性格とか、すべてを考え合わせると真相と結末に胸が締めつけられる。ニコラのやったことは、仕方ないんだけどそれでもやっぱり残酷だよね…。
女性写真家にプレゼントしたグラン・ツールのぬいぐるみに絡めて、ロードレーサーたちの刹那的な喜び・栄光に賭ける気持ちが眩しかった。チカからニコラへの説得の言葉も、サクリファイスを読んでたからとても心に沁みてきたし。うまいなあ。いい続編でした!!