あたしの中の……/新井素子 ★★★

再読。佳作デビューの表題作を含む四篇が入ってます。

  • あたしの中の……:「バスの墜落事故で記憶を失ったあたし。どうやら通算27回も殺されかかって、なお不死身らしい。あたしって、いったい何者なんだろう?(amazon解説より)」。不時着した宇宙人が地球人の遺体に憑依してるわけですが、面白いのが身の回りで死んだ人の意識がどんどん入ってきて多重同居人格になってしまうとこ。オチまで含めてオイオイと言いたくなるSF。
  • ずれ:鏡がこめかみに突き刺さって死んだ主人公。幽霊体になって、姿が映らなくなった鏡を通り抜けてみると、そこにはもう一人の自分が左右逆なだけの同じ生活をしていた! 鏡に映るのは別の世界で同じように行動している自分の姿だ、という発想のもとに書かれたお話。死んだわりに能天気だし、オチが投げっぱなしジャーマンでSF(すこし・ふしぎ)らしい。
  • 大きな壁の中と外:これが私が初期の新井素子で一番好きな話です。第三次世界大戦後、コンピュータに制御される世界で規格外として収容所に隔離され生活していた跳ねっ返りな人々が革命を起こす話。設定とかどんでん返しとかも効いていて、読みやすいし面白い。ロボットとの戦いのシーンはもうちょっとなんとかならなかったのかとは思うけど(笑)。
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