私立探偵・麻生龍太郎/柴田よしき ★★☆

「聖なる黒夜」のあと、RICOシリーズの前、麻生が警察をやめてからの探偵稼業のお話。やっぱ、警察機構や人間関係を描かずにってのは難しいんだろうなあ。探偵事務所の新たな人間関係を出すわけにもいかないし。そういう意味でちょっと魅力が薄くなってしまった本。タイムカプセル捜索の依頼と、デジャヴを覚えた薬局の青年の危機を救おうとする話と、昔馴染みの弁護士からのアレキサンドライトの指輪にまつわる依頼。特に最後のアレキサンドライトの事件は、重ねて練との別れを暗示させる大事なものだったと思うんだけど、とにかくわかりにくくて無理があったような…。光りの当たり方によって色を変える宝石、それから薬局の青年が最後に女子高生に当てた手紙の内容がどっちだったのか、そのへんを汲んで練の心情を想像するとせつなくもあるんだけど。で、麻生と練は結局いったんダメになるわけですね。「どんな世界に堕ちても一緒に生きていく」ことだけじゃ良しとせず、あくまで「練をやくざの世界から足を洗わせ、まっとうな生活に戻すこと」にこだわる麻生の気持ちは、ただの愛というよりも贖罪とか過去への後悔を思わせる。そういう意味で、やっぱりあの冤罪事件を解決しないことには二人の仲はどうにもならないんだろうなあ。