ブラック・スワン

ニューヨーク・シティ・バレエ団に所属するバレリーナ、ニナ(ナタリー・ポートマン)は、踊りは完ぺきで優等生のような女性。芸術監督のトーマス(ヴァンサン・カッセル)は、花形のベス(ウィノナ・ライダー)を降板させ、新しい振り付けで新シーズンの「白鳥の湖」公演を行うことを決定する。そしてニナが次のプリマ・バレリーナに抜てきされるが、気品あふれる白鳥は心配ないものの、狡猾で官能的な黒鳥を演じることに不安があり……。

いやー呼吸が苦しくなるような、じわじわとこわい映画だった。けど、とっても面白かった。以下ネタバレ。


  • 過保護で、娘の女としての成長を阻みバレリーナとしての成功を妬む母親との関係。元来の性格とセクシャルな表現との擦り合わせ、弱い自分の限界とプレッシャーとの闘い。優等生のニナがどんどん追い詰められていくのがかわいそうだったり、舞台で主役を張るんならそれくらいの葛藤を跳ね除けなきゃならんだろうと妙に納得したり、観てる間にこっちの感情も忙しくてどきどきしました。父を超えようとする息子の話はたくさんあれど、母を乗り超えようとする娘の物語を私はそんなに見たことなかったので余計に面白かった。
  • 弱い自分の表現として、知らぬ間にストレスから爪で背中をひっかいている、それを見咎められて母に折檻される、というのは鬼気迫る描写で好き。あと肌が鱗のように硬くなって、のちに黒い羽根が生え揃うのも美しかった!
  • あんなに苦労したんだもの、黒鳥の踊るシーンをもっと長く観たかったなあ。それともあの一瞬のためにすべてを賭けた、ってのが逆にいいんだろうか。そうかもしれない。
  • ラスト、ニナも満足げだったし、観てる私もすごく救いと解放を感じた。たとえあのまま死んでも、黒鳥を踊れずに自分を破れないまま敗者となるよりはずっと良かっただろう、と思わせるだけの積み重ねがあった。そう感じさせたことでこの映画は成功だと思う。
  • 何回かの自慰シーンや女同士の官能シーンがあるので一緒に観る相手は選んだ方がいいかもね(笑)