2/12 戦国ブログ型朗読劇 SAMURAI.com 叢雲-MURAKUMO-


<キャスト>
大谷吉継中村悠一石田三成杉田智和直江兼継:市瀬秀和、森蘭丸松岡禎丞片倉小十郎景綱:安元洋貴

<スタッフ>
作・演出/藤沢文翁
原案/藤沢文翁、寺田景子(TBS)
音楽/元永拓、市川慎、美鵬直三朗(WASABI)
音楽監修/WASABI(吉田良一郎、元永拓、市川慎、美鵬直三朗)

@浅草公会堂。昼の部、夜の部とも鑑賞。めちゃくちゃ良かったので褒めます。ネタバレあるので観るまで読まない方がいいかもです。とりあえず感動の勢いのままにうp!!ながいよーーー

市瀬さんのブログにお写真→ ttp://ichinose.freemo-blog.com/?eid=450
元永さんのフェイスブックにも→ ttp://www.facebook.com/motonaga.hiromu#!/photo.php?fbid=1883071372150&set=a.1576800235563.50150.1702342869&type=1&theater

  • 全員袴垂れ?っていうの?お着物での登場です。杉田くんは中村コラムにもあがってた赤のお召し物、中村は、黒字に赤い花の散ったお召し物。包帯や頭巾はしませんでした(笑)。しかも、杉田中村は中央のセリから二人で登場。向かって左の杉田くんは背中を向けて立ち、右の中村は片膝でしゃがんで顔を黒の扇子で隠してます。か、かっこよすぎる…なんなんだこの夢のような並びは…。ちなみにパンフレットは全員黒の渋めの着物で超しぶいですかっこいいです。
  • 前半は現代寄り。戦国武将がブログを更新していたら、という設定だからそりゃそうなる。「www(ワラワラワラ)」とか「合戦なう」とか、笑わせるのに強い杉田くんのキャラ、コメディもはまる安元さんの安定感が舞台を引っ張り、市瀬さんのアクセントの効いた武将ぶりが華やか。松岡くんも新人らしからぬ涼やかな声と話し方でさわやかに語り部を務める(後半の、蘭丸の弟にバトンタッチしたあとの変わりぶりも見事だった。唯一高めの声の役割を十分に果たしていた)。そこに、中村の男ぶり十分な智将・大谷。とてもバランスのいい配役。客席の若年層を意識したのか、この層にこそウケるネタが満載で、前半や合間に笑わせておくのは舞台の緩急として何よりも大事なことだと思うのでうまかった。
  • 腐れ病に侵された大谷と、秀吉亡きあと追い詰められてゆく三成。二人のための関ヶ原、と言い切ってしまうところがとても潔くてよい。印象的なセリフ、エピソードが次から次へと語られ終焉までの流れに違和感がない。中盤からは濃いお芝居の連続。「軍議を始める!」と身を正したあとの中村の演技が、リズム・声の張り・感情とも素晴らしく、殺気だけではないあんなに複雑な思いを込めた「殺すぞ!!」は初めてで、ぼろぼろ涙が出た。少し溜めたあと、十分に吟味した、どこでも聞いたことのない鬼気迫る「ころすぞ」だった。「押し出せーーー」も残り少ない命を賭けた戦にふさわしい叫び。
  • 音楽も迫力ある日本のきれいな音で、邪魔にならず、ちゃんと存在感があって盛り上がった。wasabiさんは時代劇に劇的に合う!わさびさんの音楽に乗せて楽しそうに駆けてく二人が見えたよ。勇猛で軽やかな、すてきなテーマ曲だった。
  • 中村は終始背筋を伸ばし、夜の部では机の端を右手で時にはつかみながら、セリフを言い終わったあとの音楽が盛り上がってる間もぴくりとも動かず、集中しきっていた。そりゃ首も肩もパーンてなるよねw 杉田くんは夜の部の最後、早々に台本を閉じ、最後の一言に向けて気持ちを高めていたように見えた。昼はくしゃくしゃに眉をしかめたり、顔をしかめたり、三成の苦悩に同化しようとしていた。すてき。
  • 中村は昼の部で「ブログ」を「ブラ…っ」と噛んでやり直し。杉田くんは夜の部で息を吐きすぎて(?)セリフが尻すぼみになった箇所があった。アドリブは夜の部の方が増えていた。杉「凄い勢いでりついーとされている!」中「その調子だ!2ちゃんには書くな!」杉「にじうらはどうだ?」中「やめとけ!あそこはめんどくさいっ」というおたくらしいアドリブ(?たぶん)もw
  • 好きな場面を上げていったらきりがないんだけど。秀吉に可愛がられた三成、昔にされた「やぐらの謎かけ」の話はよかったなー。二人の性格の違いと、三成のまっすぐさとがよく出ていた。「まっすぐなおまえを、太閤様は誰よりも寵愛した。…おれもだ」。俺もおまえをあいしている、大谷の声が優しくて優しくて。関ヶ原で負けたから悪い方に書き換えられてただけで、実のところ三成は実直で不器用な、大谷にとっては光りのような存在だったんだというのが伝わってきて、ラストまで一気に連れて行ってくれる。歴史に残した名がわりと悪者、狡猾、小者、な印象が大きかっただけにラストでの外部から見たやりきれなさと、更にそれを越えてこの舞台で表現された本人たちの内面との差が際立った。すごくよく考えられ、練られた本だと思う。後世、歴史に残っている風聞だけで三成を判断してたかもしれない自分にはっとしたよ。いい人生を観せてもらった。これぞ演劇(朗読だけど)の醍醐味!
  • あとさ、終盤の三成の「また割ってしまった…秀吉様の大事なものを…」は豊臣家をまとめきれなかった比喩であり、落胆、子供のような寄る辺なさの表現としてすごくよかったな!だから劇中繰り返された「泣いてはおらぬ」の幼少からの連なりが無理なく生きる。よく練られた脚本だ!!!秀吉様の元で一緒に育った幼少の頃から、失敗してべそをかく三成を大谷は支えてきて、理解されにくいその実直さ・阿呆なところがむしろ救いで、最後まで貫いたのだな、という2人の絆が、説明ではなく芝居で充分に堪能できてしあわせだった。
  • 腐れ病で崩れていく自分を、計略智将の大谷だからこそきっと耐えかねるものはあったはず、プライドも高そうだししょげた態度は決して見せなかったろうけど。そんな自分の皮膚入り茶を、三成が下手な虚勢を張ってまで飲んでくれて、それだけで大谷には負け戦に臨む理由になっただろうとちゃんと思える。まさしく光と闇。言葉で説明されなくても、背景や人物の心情を想像できるのはいいホンに決まっている。三成=杉田くんのキャストも激烈にハマっていて、この茶会のシーン、少し引き攣った真顔で挙動不審になりながら奪い取った茶を飲み干し、あっけにとられている周囲をよそに「あまりにうまそうだったから飲んだのだ!もう一杯たのむ」と奇人ぶりを発揮した姿が杉田くんで再生されてとても想像に易かった。
  • 大谷「おかしゅうておかしゅうて…」「…涙が出てくる」の声の切り替えがわざとらしいほど物凄いハッキリしてたと思うんだけど、それゆえにあれが大谷の人間らしい本音、弱気だと感じて、鉄壁完璧ばかりではない大谷を初めて感じてはっとなった。それが三成の前じゃなかったこともキた。もしかしたら蘭丸弟に向けた言葉ですらなくて、大谷の独り言に近かったのかも。三成の前では最後まで三成の頼れる男だたよね、そうあろうとしたんだなと。…どんなけだよー;;
  • いま思い返しても大谷の戦場での音圧にふああ…となる。叫んでるのに聞き苦しくない、二階の隅々にまで届く低い声。まじいいおとこすぎて。肉が腐ってると思うとなお燃えまする。人間、心を決めた相手のためなら根性出せる、と思えた。「治部殿、よき人生であったなあ」が満足そうすぎて。他の武士を外野扱いしてるのも闇の大谷らしかったねw
  • 三成はさいご捕まってひどい目にあってしんだけど、その前の大谷の命をかけた献身と、百姓からのおかえしで大一大万大吉を成し遂げてさ、しあわせにしんだんだよ。それが杉田くんの、台本を見ない最後の一言でわかったよ。負けても、引き回しにあっても、きっと心は救われてたって。つらいよりも救いのほうに私は弱くて、だからその後の演奏で二人の人生を思って涙がじゃーじゃーしたよ。
  • 三成の最後の芝居もさ、「にぎりめしそんなには食べられん」でどろんこ飯がいやなのかと領民に誤解されそうになって、「ちっ、ちがう、そうではないのだ、わしはもう…っ腹がいっぱいで食べられんのじゃ…」と弁解する三成の様子に、誤解されやすい彼の性格がにじんでいるようでほんと愛しくなった。夜の部の杉田くん素晴らしかった。
  • お芝居の始まりが、幼少の頃のふたりの「割ってしまった…」「泣くな。おれが一緒にいてやる」「泣いてなどおらぬ」。で、中盤二度と締めでもその会話が出てきて、「泣いてなどおらぬ」の意味がその時々で違うのがのがすごくよかった。強がり(幼少)と、親しみ(懐かしい昔話として)と、思いやり(下で書いた出陣のとき)、最後は嘘でも何でもない心からの「泣いてはおらぬ」。死ぬ時の三成は、最悪の最期でも本当に泣いてなどいなくて、生きてる間じゅう大谷がいてくれて助けてくれて自分のために死んでくれて、うれしくてしあわせに人生を生ききったんだって。「わしは天下は取れなんだが、大谷刑部を得たのだな」って、すごいセリフだ。「(最後の戦に)誘わぬのか…わしを」「いいのか」「三成が泣いておるのだ、放ってなどおけるまい」「泣いてなどおらぬ」「はは、わしの目は見えん」「わしの目も…見えん」「では、目の見えぬもの同士、行くか」で関ヶ原に出陣するとか、これが泣かずにいられようか…!!!!
  • デビューの頃に出会って、もしかしたら自分のラジオ番組持ちたいんだあ、みたいな話をしてて、あにげら一周年で物凄い真面目なお祝いメールを送った中村の文面や、二人のやりとりを思い返してしまう。つまりはキャスティングありがとうということですm(_ _)m
  • タイトルの叢雲、は劇中で二回、言葉として出てきた。三成が「秀吉様にかかる叢雲を払う一陣の風になる」と決意するシーンと、大谷の戦場でのシーン。叢雲=群がる雲らしいので、暗雲とか不安とかそういう系の言葉で、あえて暗いイメージのをタイトルにしたのかなあ。混沌とした戦国時代を表してるとかそういう感じもあるのか?
  • 中村の大谷をとてもいい男だと思ったし、杉田くんの三成もその大谷が命を賭けるにふさわしい盟友だと感じた。勝者歴史に埋もれた敗者の男二人、友情で繋がれた生き様、内容の濃いいい朗読劇でした!題材が題材だけど全然やおいに振れてないんだ!!映像でどれだけあの迫力と声の繊細な表現が出てるのかわからないけど、ぜひいろんな人に見てもらいたい!!これからももっとこういう舞台、本気の演技、観れる機会が増えますように。