ぼくに炎の戦車を


http://www.bokusen.com/

前情報なーんにも仕入れずに真っさら状態で観てきました。知ってたのは、韓国の人も出るんだねえ、ぐらいな感じ。どこが舞台でーとか登場人物の名前とかも一切知らずに公式サイトも見ず。全体的には意外と面白かったよ!
以下ネタバレ感想。思いつくままに。



  • ネタバレ見てなかったおかげで、冒頭、つよしが客席を走り抜けて登場だなんてのも知らなかったよ!!はしっこの席だったから、役者さんが隣りをすごい勢いで走ってったなあ、あ、なんかいいにおいするクンカクンカ〜!と、思った一秒後につよしの声が。え?いま走ってったのつよしかよwいいにおいww(ちなみにシトラス的な草原的なにおいでしたお)
  • わりあいすぐ笑いに揺り戻す芝居が多くて、勢いもあって、おしっこちんこ系のシモネタ以外のところは大方笑えた(人形劇で二回も放尿するシーン、あれ必要か?!w)。ふくちゃんが好き。べにこ姉さんも好き。オカマの弟くんもわりと好き。
  • 基本的にどれが誰だか役者さんがわからんw おばあちゃんがいっぱいいる赤いリボンの子のダンスがかわいい!(誰?) → パンフ買わなかったのであれなんだけど、調べたら、ちすんって女優さんが二役でやってるの?!女給ミヒと、綱渡り志望の子に言い寄ってた我が侭娘と??気付かなかった…。
  • 関西弁の小悪党の関西イントネーションと間がかんぺきでふく(誰?) → 帰って調べたら、青木崇高くん32歳。八尾出身だったwどうりで。そんで、剣心映画の左之助じゃないか!左之助は大根だったのに…。いっこ大爆笑したとこがあって、どこだっけ、と思い返したら、撃たれて死ぬ死ぬ詐欺のとこだった。間とツッコミとシリアスとの塩梅がかんぺき!ベタい!!でも本筋になんも関係ない!!
  • いいんだけど、死んじゃう綱渡り志望の子とオカマ弟くんは役を統合して一人でよかったんじゃないだろうか?その方が弟分が死んだときより悲しいし、日本人を憎む内輪の役割は男寺党の背伸びの人で充分まかなえるし。集団の掟と屋根からの転落死は、併合とか関係ない、全部自分で囲いをつくって勝手に追い込まれた結果じゃないか…まあそう思えるのは現代日本に住む私だからなのかもしれない。馬鹿馬鹿しい死だから余計に憐れというのもある。
  • 直輝と淳雨の義兄弟の契りんとこで、ほも?!ほも展開だな?!┌(┌ ^o^)┐とざわっとしてしまった。すまん、すまん…。建物の裏側に回ったときも、抜け出して契りを…っ?!とざわっとしていた。台無し。机に押し倒されたところでも以下略。男寺党は、祭事を任される旅芸人で当時の朝鮮では最低身分、芸と一緒に身体も売っていたらしいというセリフもあったくらいだから、あながち間違いじゃない気もする。そんな集団の親方と身分違いの恋仲になってしまった日本人教師…う、うん…。香川さんと元親方の関係もいいね!イイネボタン!
  • 直輝と淳雨。香川さんと元親方。どっちかに話を絞って掘り下げた方がよかったんじゃないかな…。どっちつかずで中途半端だった。香川さんの、妻も誇りも一緒に失くしてしまった「助けて下さい!!私は日本人です!!」という叫びからの、今度こそ兄と自分を裏切らなかった「私たちは兄弟です!!」はさすがにほろりときた。だからこそ、その経過を心情をもっと丁寧に観たかった。ずいぶんマイルドな日韓関係劇になっていた…。
  • つよしの、日本から逃げてきて朝鮮だいすきな教師。無垢で公正な天使っぷりはよかったのだけれど、過去が明かされたときに(え?そんないきさつがあって朝鮮に来てたの?そのわりにはずいぶんのほほんとしていたもんだw)と思ってしまったではないか。たぶんあの人は、どこにも属さない人なんだな。「おれは無力だ!!」と嘆くつよしの絶望芝居は相変わらず好物ですた、そのあとの取り戻し方がなまぬるかったのがざんねん。もういっこくらい見せ場が来るかと思ったぜ…。心に炎の戦車を呼ぶ=ゆるす(綱渡りを見届けに行く)だけだったんだもの…直輝、それ単なる仲直りや…。それがつまりは、仲間を追いやったうえ自殺行為をしようとしている淳雨=自分を裏切った元同僚教師の自殺 を乗り越え改めて朝鮮で絆を結んで生きていくということなんだろうけども。どうしてゆるすことができるようになったのか=また逃げるのかという妹の言葉(たまには戦車に乗りなさいよ!ってなじりはちょっと面白かった)=心に炎の戦車をという直輝のずっと好きだった・心の支えだった詩。直輝の物語は、ちいさな一人の心の中のお話だったんだな。それはそれできらいじゃないという気がしてきた。直輝の気持ちがちょっとわかる。世の中は、世の中の人たちはどうしてああなのか、心底不思議で理解できない、裏切られて立ち直れないゆるせない。私も誰かに裏切られたら、たぶんそいつのことは一生ゆるさずに、眼にも触れない遠いところに行ってのほほんと暮らすと思う。あれ?そういう意味でいくと、直輝が淳雨をゆるした→立場や価値観の違う友達もゆるして付き合っていく→心の戦いを背負いこんで生きていくということなのか。私にぶい…。
  • てっきりラスト、直輝も寺男党に入るかもっと深く関わって地位向上にでも務めるのかと思ったら、陶芸を学びに出てしまった(笑)。いや、白磁の器に魅せられてたっぽいし前振りはされていたのだけど、結局は身分の違う友達兼恋人を見つけてハッピー♪明日があるさー♪でいいのか。誰も守ってないし助けてもないからね、無力なままだからね、いや、淳雨の心を慰めることはできたのだからそれで充分? 直輝の奥の奥の奥底を、もっと見てみたかったよ。
  • 淳雨がシューンとしながら言った、「おれの身分は低い。それでもおれの心は野良犬じゃない。石じゃない。おまえはそれをわかってくれていたのではなかったのか…(しゅーん)」はいいネームだったなあ。韓国語発声なので、実際の芝居の言い回し、細かいニュアンスはわかるはずもないのがかなすぃ。
  • 意識的にかなんなのか、あんまり日本と韓国のドラマとしてはとらえられなくて、占領・併合が起こったとある時間と場所の話として見た感覚。私は日本に生まれたから日本人なだけであって、韓国に生まれてたら韓国人だし、インドに生まれてたらインド人だ。愛国心とか帰属心とかも現状あまりない方で、ピンときていないだけかもしれない。興業側の狙いからは外れるダメな観客である。
  • カーテンコールで抱き合いすぎwww何回抱擁するんですか日韓友好☆ つよしはなぜか、日本憲兵の役者さんの前まできんちゃん走り(憲兵の真似?)をして顔を突き合わせてまた元の位置に戻っていた。何がしたかったのw 香川さんはカーテンコールでも片足を引きずっていて、あれは添え木か何か入れてるんだろうな、と考えた。あとは、つよしのからだはふかっとしているのかなあ、かちかちなのかなあ、とニヤニヤしながら抱擁天国状態なステージを眺めていた。
  • どうでもいいけど、ポスターの太陽がわたしには夕陽に思えるんですけど朝陽なんです? いや、「愛する友よ、ぼくは君に語りたい。明日はきっと美しいと…」ってコピーだから、現時点は暮れゆく今日なのだから夕陽でいいのか? ほんとどうでもいい。
  • 一番気になって、帰ったら調べようと思ったのは、ウィリアムブレイクの詩でした。というわけで調べたよ!
  • エルサレム」(Jerusalem)は、18世紀イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの預言詩『ミルトン』(Milton)の序詩に、同国の作曲家サー・チャールズ・ヒューバート・パリーが1916年に曲をつけた合唱曲。原詩のタイトルは“And did those feet in ancient time”(古代あの足が)だが、一般に「エルサレム」の名で知られる。

ぼくの燃える黄金の弓を
希望の矢を 槍を
ぼくに
ああ 立ちこめる雲よ
消えろ
炎の戦車をぼくに与えてくれ
精神の闘いからぼくは一歩も引く気はない
この剣をぼくの手のなかで眠らせてもおかない
ぼくらがエルサレムを打ち建てるまで
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%83%AC%E3%83%A0_(%E8%81%96%E6%AD%8C)

■ 作者からのメッセージ
男寺党は簡単に言ってしまえば、放浪芸人の集団であるのだけれど、その芸は農楽、皿回し、アクロバット、綱渡り、仮面踊り、人形劇と多岐に渡り、その豊かさに驚かされる。彼らは村々を回り、豊饒を祈ってきた。にもかかわらず、彼らの扱いはひどくわずかな食料と一夜の宿が提供されるだけであった。彼らのうちの誰かが亡くなったとしても、ただ石を積んで弔うしかなかったという話を聞いた時、不覚にも僕は涙を流してしまった。そして、この見捨てられた人々の物語を誰かに語りたいと思ったのだ。百年も昔の朝鮮の名もなき芸人たちの物語は、日本の観客たちには無縁のものであるかもしれない。それでも、路傍の石のような彼らの魂に、ほんのすこし、ほんのひととき、想いを寄せてくれることを願っている……。
鄭 義信(チョン・ウィシン)

■ STORY
1924年、朝鮮、京城からほど近い地方都市の古めかしい城門の前。城門の彼方から聞こえてくるサムルノリの心躍る音が秋空に響いている……。令旗を先頭に、鮮やかな民族衣装と頭には白い長い紐が結えつけられているコクトゥセ(頭領)の高大石【キム・ウンス】、カヨル(演者)の李淳雨【チャ・スンウォン】ら男寺党(ナムサダン・放浪芸の集団)がやってくる。そこへ盗んだ風呂敷包みを抱えた男と、それを追って駆けてくる柳原直輝【草�亟剛】。とっさにその男を捕まえた淳雨だったが男は風呂敷包みを落とし、直輝が大切にしていた白磁の茶碗を割ってしまう。犯人を捕まえた感謝ではなく白磁を割った淳雨を責める直輝。しかし淳雨はなぜか怒る気になれず、むしろ直輝に興味を抱くのであった。
数日後、京城近郊の直輝が勤める学校の教室へ松代【広末涼子】が兄・直輝を案じてお弁当を持ってくる。直輝は松代の夫・大村清彦【香川照之】のことを、松代を愛していない守銭奴だと罵り別れろと諭すが、松代は深く清彦を愛しており一向に耳を貸さない。そこへ先日のお詫びに直輝を訪ねて淳雨が現れる。直輝は朝鮮を、そして朝鮮文化を、朝鮮の人々を愛していると伝える。その想いに胸を打たれ、直輝の想いを素直に受け止めた淳雨と直輝の間には友情が芽生えるのだった。
場所は変わり京城の歓楽街。清彦が経営するナイトクラブ「不夜城」へ泥酔した息子の明彦【高田翔】がやってくる。母と自分を棄てた清彦を恨み、非人道的な政治(統治)を恨み、そして義母・松代への思慕も断ち切れず、自分を持て余し酒に頼る明彦。様々な人々が集い陽気な歌とダンスが披露される最中、裏口では大石にお金を渡しながら親しげに話す清彦がいた。実は生まれてすぐに捨てられた日本人と韓国人のハーフである清彦は、男寺党に拾われ、大石とは幼い頃から共に芸を磨き無二の親友であり心の友であった。民族独立運動の一員という裏の顔を持つ大石に、清彦は資金だけでなく情報提供もしており…
淳雨との出会いで、男寺党の芸の素晴らしさと白磁という朝鮮文化へ益々のめり込んでいく直輝。複雑な過去を持ちやりきれない思いを抱える清彦。事情は聞かずとも、そんな清彦を支えようとする松代。やがて不幸な出来事により直輝との間に再び溝ができてしまう淳雨。そして憲兵に追い詰められていく大石と清彦。それぞれの決断の時は近づいてきていた…
「僕に炎の戦車をよこせ。決して心の戦いをやめないぞ。僕の剣をいたずらに眠らせておくこともしない……」
文化と歴史の波に翻弄されながらそれぞれが選ぶ未来とは…


■ CAST
草�亟剛、チャ・スンウォン広末涼子、高田翔(ジャニーズJr.)、成河、馬渕英俚可、ジョン・テファ、キム・ムンシク、キム・ヒョンギュ、ザン・ドクジュ、イ・ヒョンウン、星野園美、ちすん、朴勝哲、清水恒男、水谷悟、西村聡、川守田政人、新田えみ、大隣さやか、根本大介、青木崇高安寿ミラ、キム・ウンス、香川照之


■ STAFF
作・演出:鄭 義信
翻訳:川原賢柱
美術:土屋茂昭
照明:増田隆芳
音楽:久米大作
音響:井上正弘
衣装:前田文子
ヘアメイク:川端富生
男寺党指導:南基文
擬闘:栗原直樹
振付:ANJU
演出助手:松倉良子
舞台監督:榎 太郎