わたしの神様/小島慶子

視聴率低迷中のニュース番組「ウィークエンド6」の起死回生をはかるため、テレビ太陽きっての敏腕プロデューサー藤村は“女子アナ”キャスターのてこ入れに動いた。産休に入る佐野アリサの後任に起用したのは、全方位の好感度で不動の人気を誇るミスキャンパス出身の仁和まなみ。アイドルアナからニュースキャスターへと鮮やかな転身をとげたい彼女は、権力欲や保身に走る男たちや、敵意むき出しの女たちに晒されやがてスキャンダルの渦に引き摺り込まれる。
一番若くて一番きれいな女にだけ価値がある。描かれることのなかった“女子アナ”たちの嫉妬と執着と野心。一気読み必至の極上エンタメ小説。

「私にはブスの気持ちがわからない」で始まり、「ブスにも私の気持ちはわからないだろう」で終わる女子アナ・テレビ業界を舞台にした話。
人気女子アナまなみ、妊娠しそのまなみに立場を取られた地味アナ アリサ、地味アナ試験に落ち裏方ジャーナリストをしているきつめの才女 望美、まなみと同期で失踪したルイ、と4人の極端な(笑)女性を軸に、各人の心境がドロドロしっぱなしの物語。ここまでかつての職場のことをフィクションとはいえ露悪的に書けるのはすごいなって思う。それだけ女子アナの見られ方を考えてきたんだろうな。あと、女子アナドロドロに釣られて読むだろう男性社員へのパンチとか?これを面白そう、と思って読み始めた時点でまなみの信条を裏打ちしてしまったようで暗い気持ちになるw
どーせなら、ラストは派手にぶちまけて欲しかったな!てっきりルイが番組で全部言っちゃうのかとw ルイだけ設定が飛んでてちょっときれいげに書かれてるのがまたわかりあえない闇って感じがして。
人の痛みはわからない、私の痛みは私だけのもの、ってのは私の個人的心情とも合致するのだけど、それでもどこかで認めてほしい知って欲しいという部分があるんだろうなと虚しい…悲しい?読後感だった。この人たちも、世間の人たちも、みんな無自覚なのが恐ろしい。まなみだって、自覚的なようでいて実際は、容姿だけを基準とする男性ばかりなわけないよにあえてそこだけに価値観を置く狭い生き方を選んだわけで、自分の武器をそこだけに自分で決めてしまう、愚かな視野だなあと思った。旦那、父親、とまなみの先行きが暗雲しかないけど…そうとしか生きられない悲哀を感じたラストだった。