スローグッドバイ/石田衣良

石田衣良の初めての短篇集(10篇)で初めての恋愛作品集。らしい。まあ今まで読んできたものがIWGPだったり波のうえの〜だったりせめて4TEENだったりしたので。違和感。恋愛もの似合わねええ〜〜!と(笑)。それでも好きな話を挙げるならば、「フリフリ」と「ハートレス」かな。文章がスタイリッシュすぎて、あと作者が男性だという先入観(なんせ顔も知ってる)もあって作中の「こんな女いねーよ」とか思ってしまうんですが、まあいいや。/★★
あと1篇、冒頭を読んであまりの描写・表現に涙が零れそうになったとこがあるので記念に引用。

カロリーはあるのだろうが滋養はなく、味はするようだが香りはしない。

会社員生活も五年目に入っている。暗い感傷や自己憐憫に通じる心の動きは、ちいさな芽のうちに凍られせてしまうのが習慣になっていた。にぎり潰したり押さえこんだりするのではなく、ただ心のフリーザーに放りこみ、暗闇のなかでからからに乾燥させてしまうのだ。

いくら自分のものでも、心の動きなどにあまり夢中にならないようにする。どうせ心の天気など、明日の朝には変わっているのだから。


スローグッドバイ「ローマンホリディ」より