メリーゴーランド/荻原浩

メリーゴーランド

メリーゴーランド

超赤字テーマパークを立て直すことになったのは、新しい部署に移ったばかりの一公務員。地方都市の村興しと権力闘争に翻弄され、優雅なアフター5はままならない。おかしくて哀しき奮闘を描く宮仕え小説。

★★★★
公共事業、金をドブに捨てる感じでつくられた田舎のテーマパーク・アテネ村を公務員が立て直そうと奮闘する話。革命なんておきないし、理想なんてかなわないし、組織も上の人間も変えられない、それでも仕事として働くことの意義とか意味とか爽快感、凄くうまく描かれていた。面白かった!イベントごとをつくる楽しさとか煩わしさが、私も学生時代に学祭のステージづくり(ミスコンとかをやるの)を3年やったことがあるので心に迫ってきた。助っ人として主人公の昔馴染みの劇団座長が出てくるんですけど、めちゃくちゃな彼らが公務員・会社員に対して漏らす様々な忠告や叱責がいちいち爽快で胸に痛いくらいだった。安定を求めて公務員になりたいと思ったこともあったけど、この惨状じゃ私にはきっと耐えられなかったなあ。今の会社でさえ働かないロートルなおじ(い)さんたちに苛々しちゃう派なので。これはもう性格の問題だと思う。

「みんなそういうことを考えてやってるわけさ。パーマ屋も牛丼屋もビール会社もスーパーマーケットも歯磨き粉の会社も消化器のセールスマンも。おまえらも、きちんと考えろ。世間と向き合え。それができなければ、よその人間の知恵を借りろ」
「きちんと考えないと店は潰れる、私立に通わせてたガキは退学、家族は路頭に迷う、首をくくるしかない。そういう背中に突きつけられた拳銃がないから、くまのプーさんみたいなのん気なことばかり言うんだ。違うか」

頭を使って使って使いまくって働くことって素晴らしい。私もがんばろ。奇をてらわない、地に足の着いたきもちのいい本だった。