俺ルール・僕の歩く道・自閉症

俺ルール!―自閉は急に止まれない

俺ルール!―自閉は急に止まれない

翻訳家であり、幼い頃から周囲との違和感を感じながら育ち、30代になってアスペルガー症候群(知的面・言語面での遅れを伴わない自閉症スペクトラム)と診断された著者が綴った、自閉脳の奥深さに迫る爆笑エッセイ。自閉っ子のフシギな振舞いにはリッパな理由があった! 一抹の真実が含まれた「俺ルール」の仕組みとは?

先生から見たら、さぞかしわけのわからない子に見えたことだろう。毎週のそうじは普通にこなすのに、学期末のそうじになると急に人が変わったようにさぼるんだから。
でも私は、ルールには従っていた。
必要以上にりちぎに、従っていた。
ただそのルールが、私だけの「俺ルール」だっただけなんだよ。

  • たとえば、トイレの便器の前でしくしく泣いている自閉っこがいたとする。昨日別のトイレでは普通にできていたのに、今日のトイレではできない。それがどうしてかなんてわたしたちにわかるだろうか。この筆者の場合は、トイレは形状で覚えるより前に「toyokiki」というメーカーロゴ部分で接写画像的に認知していたらしく、「ina」製の便器をトイレだとわかることができなかったらしい。「toyokiki」の刻印がない=トイレではない、で、ここに何しにきたんだっけ、と別のトイレを探し回る。そして次にはトイレを「白くてスリッパの形をしたもの」と覚えたのだが、そしたら今度はina製のものを「トイレとして使っていいもの」というようになったかというとそうではなくて、「形はトイレみたいなのに、toyokikiではないし、ニセモノだ。なんでこんなところにニセモノが?」と怖くなって泣いてしまったんだそうだ。その世界、理屈、知らなかったらわかるわけないよなー。
  • 某様のブログで紹介されてたので読んでみました。字がおっきくって、漫画もあるし、おもしろい。お勧めです。
  • おお、ぼくある第一話で堀田先生がテルにしたテスト質問が話しに出てきた〜。自閉っこは、いっこいっこの記憶はルールとして覚えても、それをヨコや前後につなげたり、文脈を読んだり、想像したり応用したりはしない。ということだそーだ。
  • 動物園で来園客に話しかけられたテルが失敗したときに、こうしたらいいかな、と書いた解決策は、でもあれじゃあ足りないんだというふうに思う。「お客さんとは話さないでください」と言われたらテルにはその瞬間からそれが新しいルールで、そしたら話しかけられても、質問が答えられるものだったとしても、「お客さんとは話してはいけない」のだ。「なんで」ダメなのかとか、疑問に思わない。「そういうルールだ」として覚えるだけ。でも程度によっては、俺ルールの著者のように覚える範囲を広げたりできるんだろうか。「話しかけられて、答えられない質問だからって黙ってたらお客さんは無視されたと思って怒るでしょう?テルだって都古ちゃんやお兄ちゃんに無視されたら悲しいでしょう?だから、話しかけられて何も答えないっていうのはダメってことなの」「話しかけられて、対応は二種類あります。質問がテルにわかることだったら答えてあげて。テルにわからないことだったら、三浦くんを呼んで」…どうなんだろう。そういう意味で、都古ちゃんに傘をさしかけたのは「雨が降ってて・おんなのひとが泣いてて・自分が傘を持っていたら、入れてあげる」という新しいルールだったし、こうたろうを探しに出かけたのはほんとの意味で新しい応用、感情によるルールを逸脱した奇跡だったのかもしれない。
  • 作中で紹介されてた自閉のお父さんの発達支援ブログ(ttp://tamago-picture-world.cocolog-nifty.com/blog/2005/01/post_1.html)
  • テルも毎日帰ってきてすぐ歯を磨くのは、「ルール」だからで、そういうもんだからで、「雑菌を防ぐため」「風邪にならないようにするため」だからではないんだろうなあ。ときどきテルが言う「はい」といういたいけなお返事の中に、どれほどの混乱や不可解さが潜んでるのかと思うと。それでも「はい」と言って素直に聞こうとするテルの「認知」ではない「性格」の部分はきっと素直ないいこなんだろうなあ。あのバリエーションの微妙に違う「はい」が大好きです。
  • 本の感想としては失敗だなこれは。むしろ「僕の歩く道」の感想だよ(笑)。自閉症はひとによって症状ももちろん性格も違うと思うのでドラマもこうだ!とは思わないようにしますけど、自閉症のメカニズム(の一例)が少しだけわかった気がする。何より面白かったなー、ある意味てんさいの伝記と近しいものがあるかもしれない、わたしとは視点が違う・見え方が違う、という意味では。物事を繋げて・連想して見ることができないってのはほんと疲れそう!そういう能力を使い過ぎるのも疲れるもんだけど。
  • で、これを読んで残りのドラマがますます楽しく見れそうですテルはどう思ってんのかな、こうかな、ああかな、と想像する、私の側の幅がちょっとだけ広がったことによって。