ストリングス〜愛と絆の旅路@TOHOシネマズ六本木ヒルズ

ついでにこっちにも転載しときます。

1回目観たときは、何だかブツブツに切られてるような気がするし、テーマのバランスがちぐはぐでどうかなー?って印象だったんですが、2回目観たあとでは色々と思い巡らすことも多くて、ああ面白かったのかな、と思えた。私にとってはそんな映画です。テーマをどう受け取っていいのか、迷うなあ。<素直に愛と絆で受け取れよ。

以下ネタバレ。


  • まずは世界観に感心したところ。

主に城門と、格子の地下牢屋です。初め門は気付かなかったんですよ、なんで下開いてんじゃん?と。この世界の住人は全員弦が天まで伸びてるから門は全部壁である必要はないんですよね、ある程度の高さに平行棒されあれば国の中にはドールたちは入れないんだ!なるほどー天から体に糸が吊るされているという設定を活かした面白い設計だなあと感心。格子牢屋も同様で。その二つのシーンは、だからこそ門を境にしたハルとジーナの対面式の別れや、格子を真下に落として救い出す強いハルの演出が普通とはちょっと違った形で描けるんだから素晴らしいと思った。
あと、水中のシーンの人形の動きに気合いが入ってました。ほんとに泳いでるみたいな手足!すごい。
ラスト近く、戦でたくさんの人形たちの弦が炎で燃え上がるところは圧巻だった。画面いっぱいの命、炎、そして焼き切れていく。死んでいく。すごい表現で鳥肌が立った。焼け野原の炭化した人形たちの死体も凄かった。イシュバール……。

  • 剛さんご推薦、くだんのラブシーン。

吐息だけの(っていうか人形ですから)ラブシーンって珍しいよね。かえって非常にイマジネーションが刺激されて良かったです!声が、「ヤッてるヤッてるよ!あ、感じてやんの!童貞くん!」って雰囲気ばっちり(我ながら下品だなあ・笑)。2回目の上映は当然の如く目を閉じて聞き入りました。う…!(脳内の)剛さんのお色気ヤラれ顔に悩殺……!!<どこまでも受身な王子 導入部の、ジータがくいっと手を動かすとハルの手が上がって、下がって、というアレの表現はたいそういやらしかったし。やるなあ!
ここに限らず、ハルは吐息の演技が多くてくらくらやられっぱなし。とにかく引き倒されたり襲われたり多いんですよ王子は!よわっちいの(笑)。そのたんびにヘタレ声を聞かせてくれるので美味しかったです。「やめろぉ」とか「はなせえ」とかさ。それが最後には旅で学んだ新たな希望を胸に、飛び上がっちゃうんだもん。かっこよかった。自分の悪を認めた上でそれを償うために頑張れるというのは、立派な成長だと思う。

前半の声のかすれ具合、つまりはジーナたんハアハア具合が凄かったわけですが(笑)ジーナの水浴びを覗き見てるときなんか酷かったヨ、ほとんど変質者ですよ。くくく!そのへんのアフレコはね、ああ慎吾のアニメ声っぽいな、と思ってたんですよ。だけど後半、ガラクが出世して屈強な体の部品に取り替えてからの声はほんとに別人!かっこいいの!特に赤い空と月をバックに、「殺せ!女も子どももみんな殺せ!」とか言ってるときはほんと痺れた。
確かにガラクジーナを好きだった。自分のものにしたくて、ニゾの指示に背いてでも命を助けたくて。だけど腹に虚空を抱えるジーナは、「人は誰も誰かと繋がってるの。美しい音楽を奏でるの」とか言いつつ、「あなたとは繋がっていない」とあっさりばっさりガラクをフリます(笑)。そういえばガラクがかっこいい新たな肉骨を手に入れて目の前に登場したときでさえ、「(ガラクの妻になるくらいなら)死んだほうがマシだわ」と瞬殺でしたからね。そこだけは、ジーナひどいwと噴き出しそうになりました。
昔、ガラクは忠誠心に溢れたいい臣下だったんじゃないかなあ。虐殺を断わる心根の正しさもあったし。そんな彼の心を折ったのは他でもないジーナの父・カーロなのに。ジーナにフラれてから、おそらく望んだ者と繋がれない絶望で破滅(戦闘)へと突き進んでいったガラクが悲しい。

王子の旅は、自分の父が実は暴君で、もとはゼリスのものだった国を略奪したという歴史を知る旅。最後の方でハルが「悪いのはぼくたちだったんだ。自分こそが悪だったんだ!」と叫んでいるように、正義でもなければ無知で無力な自分を知る旅。だったらジーナはどうだったんだろう。ジーナは最後、死ぬ。きれいな夕焼けの中、「私と一緒に自由になるのよ」と鳥を羽ばたかせて。ハルとジータも「ジーナは本当の意味で自由になったのよ」「そうだな」と見送る。なんだかとっても清々しく終わっていったように見えるけど、つまりは操り糸からの解放=死=自由ってことだよね……。まあ、生なんてそういうものなのかも。わたしたちが支配されている窮屈な生。つねに過去に縛られ、操られ、鬱陶しくて苦しくて、だけどだからこそなるべく愛を繋いで生きていく。やり方を間違うと憎しみでしか繋がれなくなってしまう難しさ。
ジーナは平和を願い愛を溢れるくらい持っていて慈悲深くて(ガラク以外には・笑)だから私には殉死に見えたのだ。国の罪を背負って、身軽になるために、死んだように。あとをハルに託して。弦の先の愛と絆を頼りに、不自由さの中で、それでも生きていける私たち。死んだら自由になれるからそれまでがんばろう!ってことでいいのか?(こういう感じ方をしてしまうのが私の後ろ暗いところだと反省しています・笑) 生の喜びと苦痛、そして死の喜びと苦痛まで描いたところがなんか良かったなあ。
デンマークの死生観・宗教観はどうなってるんだろう。デンマーク版のセリフや独白はどういうニュアンスで語られていたんだろう。ジャパンバージョンとは違うのかな、知りたいなあ、と思った。そういうところを多少変えてるからこその脚本:長塚圭史なんだろうし。うーんむずかし。また観たら別の感想を持ちそうな気もします。シンプルな寓話なんですよね。ただ、主人公の国が実は悪の側だったんだ、っていうルーツを踏まえて強くなるってところが、ひねくれ者の私にはよかったです。とりあえずUP。やっぱ観てよかったな!
あ、好きなマリオネットは、ハルに手をあげた奴隷のおじさんと、エリトの七三分けの方の息子(笑)。あとジーナも当然ね。それにしても優香ちゃんの声はいい!そういえばクリスマップのときのお歌も良かったんだよ。ふふ。もっとこういうお仕事してほしいな〜。