キサラギ@ユナイテッドシネマ豊洲ららぽーと

売れないグラビアアイドル如月ミキが自殺して1年、彼女のファンサイトの常連である5人の男が追悼会に集まる。
家元(小栗旬
オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア
スネーク(小出恵介
安男(塚地武雅
いちご娘(香川照之
5人は思い出話で大いに盛り上がるはずだったが、「彼女は殺された」という言葉を引き金に、事態は思わぬ展開を見せ始め……。
監督:佐藤祐市、脚本:古沢良太

★★★★☆ おもしろかった!!うーんこれは予想以上。出てる俳優5人が揃いも揃って達者なので、笑わせるのもモメるのもホロリとさせるのもお手のもの。追悼会の会場から場面は動かないのに会話だけで引っ張っていく脚本のセンスも良くて、安心してうははっ、と声を出して笑えた。寒い部分もなく、これだけテンポよく笑わせられるのは凄いことです。以下ネタバレ。ああでも、ネタバレ読む前にまずは映画を観てください!!


  • 塚地かわいかったです。嫌味のないオタオタっぷりが似合うなあ!中盤までの息抜きポジションも見事でした。出てくるたびに脱力〜。「喪服を着れば盛り上がれるんです!」
  • 小栗くんはとにかく声がいいよねえ。前半のいたってフツーな好青年もハマっていたし、一人イジける卑屈なファンっぷりは愛らしい。なのにひとたび真面目な声を出すと、ゾクゾクとかっこいいのだ!「100%、のつもりです」
  • ユースケはオダ・ユージネタ決まってました(笑)踊る〜が生きてるなあ。すべての層に通じると踏んでのギャグってのが凄い、いい意味でも悪い意味でも踊る〜は邦画の代表ってことですよね。で、あとやっぱり泣き顔がせくしー!あの小さな目で絶望っぷり・抜け殻っぷりを表現させたら凄まじいです。マネージャーは、ほんとせつなかったなあ。やるせない一年だったんだろうなと想像させる。「事件は現場で起きてるんだっ!」
  • 小出くん。観にくる前まで彼の存在をキャストに数え忘れてたというなぜか地味な役者さんなんだけど(好きなのにねー)、さすがにうまかったです。彼のカラリとした若者キャラに前半はずいぶん助けられてたし、ツッコミのタイミングが絶妙。しかし、スネークが「友人」の位置だってのが一番無理があったような。「全然違いますよ」
  • 香川さん。キモっぷり・挙動不振ぶりが見事でした。二度もトリックスターとしてきれいにキメていた。「ストーカーじゃない、見守っていたんだ」

アイドル(もしくはすべての虚像)にファンとして夢中になったことがあるひとなら、人一倍楽しめる、まさにその通りの映画でした。あのつじつまの合わせ方もすごい。映画のためのオリジナル脚本で(たぶん)低予算でこれだけできるってのも。おかげで映画館は満員でしたよ。渋谷は売り切れてたし。脚本は三丁目の夕日のひと(古沢良太さん)なんだねえ。色々調べてると、まずは舞台用のホン→小説化→映画化、という流れみたい?です。
如月ミキが自殺じゃなくて殺人?誰のせいの自殺?いやいや事故死?と彼らの推論の上で成り立っていくあの過程にはワクワクしました。「ボトルが詰め替えられてて」「ゴキが出て」「寝ようというときにはアロマキャンドル」、そして「地震」。全部それまでに各人の素性が明らかになる段階で出ていた伏線。見事な流れ。そんで、そのことによっていったんは絶望に追いやられたマネージャーが救われるという。

好きなシーンをあげるとキリがないんだけど、マネが「じゃあいつまでもB級でよかったっていうのか!」と自己弁解しようとしたのを、「よかったんですよ」「いつか引退して田舎に引っ込んでお母さんになって」「それでもミキちゃんが死んでしまうよりはよかった」と静かに否定したファンたち。好きなアイドルに死なれたら、きっと私でもそう言うだろうと思って彼らのヲタ心にシンクロ。「ミキちゃんが悩んでたのに手紙200通も送って、頑張れ頑張れって、俺が追い詰めたんだ」……家元ってほんとせつないなあ。

そしてもういっこの逆転、家元の手紙を取りに戻ったってのが、もちろんファンタジーなんだけど、だからこそ、彼らの推論のなかでだけ明らかになってく事柄だからこそ、よけいに泣けた。「ほんとうに彼女を支えていたのは、あなただったんですよ」「友達でも、マネージャーでも、幼馴染みでも、父親でも、ない、」「彼女が命より大事にしていたのは、ファンだった」うわああああん!!
ラストの1カットは映画としてはいらないなと思ったな(小説版でのエピらしいです)。ああでもあれによって、私たちがアイドルという虚像に思い巡らすあれこれは、所詮夢みたいな蜃気楼みたいな真実は何にもわからないものなんだよ、というのを暗示する意味ではいいのかもしんない。あと如月の歌もなー、別枠で5人が踊ってるのは楽しいんだけど、如月の顔は最後まではっきり見せないほうがよかった気がする(素朴可愛かったけど)。ともあれ大満足の出来でした!こんだけ見事なの観ちゃうとまいこはあああんとか観るの怖いなw
蛇足。父親のエピを削ってスマでやるとしたら……(始まったよ勝手な妄想・笑)、オダは中居さんでしょ、するとスネークは慎吾がいいな、うーんじゃあ家元が剛で、いちご娘が吾郎さんで、あっやばい木村さんが安男になっちゃう。うーんうーん。いちご娘は動かさず、じゃあ安男を慎吾にして、オダを木村、家元を中居、スネークを剛。どうですかw