アヒルと鴨のコインロッカー@恵比寿ガーデンシネマ


伊坂幸太郎の原作(http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20070109#1168357268)の映画化。やっと公開になったので観に行ってきました。心配していたトリック(?)の部分はなかなかうまく処理されていて安心。でも小説の方が言いたいことはよく伝わってきたかなー。濱田岳くんの演技はあっぱれ、あれだけ特徴のなさそうな椎名をよくぞあそこまで愛らしくしてくれました。ありがとう!河崎に真相を確かめてがっくりくる場面では涙目だったりして、その解釈と演技プランすてき☆とキラーンとなりました。彼によってだいぶ物語が地に足の着いた感じになったと思う。ボブ・ディランが音として耳から聴けたのはよかったな。以下ネタバレ。


小説よりも良かったのは、琴美を失って、河崎も死んでしまって、そのあとのドルジの様子が回想の映像として見れたこと。あの喪失感とやるせなさは凄くて、だからあんなにやさしかったドルジが復讐に向かっていった説得力になっていた。辛かっただろうなあ。ちょっと貰い泣き。ペット殺したちの残虐な所業をもっとどぎつく見せた方が簡単にその説得力は増したと思うけど、敢えてそうしなかったのも映画としての良心が効いていた。惜しいのは、「河崎はもう死んでいる」というのを、椎名が自分で気づくんでなく麗子さんがあっさり言っちゃったのに気を削がれたよ。
すべての基本に流れている「アヒルと鴨」「日本における外国人」に関するメッセージは身につまされた。何にも悪いことしてないのにドルジのような思いをするアジア人がいる。悪いことをするためだけに入国してくるアジア人がいる。知らなくて怖いからって一方的な偏見でああいう態度を取ってしまうってのは、よくないなあ。わかってるけどどうしても足が竦むのが悲しい日本人。
椎名が最後に見せた男気はあっさりしていながらも良かった。それまでの濱田岳くんのオロオロぶりが効いていた。ああいうふつうの善良な子が、友達の犯罪を見て見ぬフリをするよ、っていう意思表示をするってのは最大限の友情の示し方だと受け取りました。ともだちに赦されて、ドルジはちょっとだけ救われた、と思う。