潜水服は蝶の夢を見る@新宿バルト9


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観て良かった。久々に涙が頬を伝うほど泣きました。せいいっぱいがまんしてそれ。こういう題材にありがちな、泣かせよう泣かせようみたいな演出はないんです。全身麻痺だからってただ染みったれてないとこがさすがフランス映画。それなのに体が動かない絶望はきっちり伝わってくるのです。主人公は麻痺しながら毒づくし、ユーモアもある、なぜか看護は美女ばかりでしかもモテモテ。電話を設置しにきた電話業者が一見しつれいな発言をしたと思ったら、そのギャグに爆笑のジャン=ドー、怒る療法士に「君には冗談が通じない」とか思っちゃってるの。

病院のベッドで目を開けたジャン=ドーは、自分が何週間も昏睡状態だった事を知る。そして身体がまったく動かず、唯一動かすことができるのは左目だけだという事も。ジャン=ドーは雑誌「ELLE」の編集者で、三人の子どもの父親だった。彼は言語療法士の導きにより、目のまばたきによって意思を伝える事を学ぶ。やがて彼はそのまばたきで自伝を書き始めた。その時、彼の記憶と想像力は、動かない体から蝶のように飛び立った…。

まばたきでアルファベットを指示し、気の遠くなるほどの時間と労力をもって綴られた文章を読み上げる、最初のシーンでぐおおと涙腺が。さいごに残されたたったひとつ、「表現すること」で、彼は救われたのだなと。その偉大さを思いました。1リットルの涙といい、どうも私はこういうテーマに弱い。そしてエンドロールに入るとこの音楽が、バラードでもなんでもなく、ロックでポップな音だったのが素晴らしかった。崩れ落ちた氷壁が、まるで彼の精神が救われたのを表現するように巻き戻っていく演出にも泣かされました。タイトルもとてもいい。唯一、愛人?のくだりがちょっとよくわからなかったんですけど;; 劇場内もシンと静まり返って、みんな集中して観てるように思えました。