WELL/木原音瀬

WELL (Holly NOVELS)

WELL (Holly NOVELS)

強豪揃いな木原作品のなかでも鬱る鬱ると言われまくってる話で、どんなんだろとどきどき読み始めたんですが。いわゆる世界崩壊後、生き残った少数の人間たちのサバイバルもの。酷い目にはあってるんですが、狂気に振れすぎず、でもマトモではなく、ぐいぐい最後まで読めました。最終的にはしのぶの存在がいちばん力強いというか、迷いなくこわいくらいに「生きる」「人間」を体現してるようで圧巻でした。はっきりと書かれてはなかったけど、しのぶが初めてパンを取ってくるために、田村の盲目の仲間を殺してたってことでいいんですよね? で、「何のために」「誰のために」する殺人なのかで罪の是非が変わるのか、というそういうテーマ。動物を殺すか人肉を食べるかという田村の葛藤も含め、ヒトは自分の感情でしか物事をはかれない、という。牛泥棒にしろこれにしろ、木原さんはもうボーイズラブとかそういうんじゃなくて、ヒューマンドラマを書いたほうがいい、事実オンナの出てこないそういう方向にいってるんだろうけど。今回の話でいけば、滝くんはどうしちゃったんだろうとか、伊吹の心情とか、そっちももっと掘り下げて、がっつりすべての人間が死に絶えるまで読みたい感じです。……悪趣味かな。