DEADSHOT/英田サキ
DEADSHOT―DEADLOCK3 (キャラ文庫 あ 4-3)
- 作者: 英田サキ,高階佑
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2007/06/23
- メディア: 文庫
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ディックを復讐の連鎖から解放したい──。宿敵コルブスの逮捕を誓い、捜査を続けるFBI捜査官のユウト。次のテロ現場はどこか、背後に潜むアメリカ政府の巨大な影とは…? ついに決定的証拠を掴んだユウトは、コルブスと対峙する!! ところがそこに現れたディックがコルブスの銃弾に倒れ…!?
執念と憎悪と恋情──刑務所から始まった三人のドラマが決着を迎える。
いやーよかった。ちゃんと決着ついた。デッドシリーズ本編最終巻(前作感想→http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20080719#1216441669)。ユウト・レニックスはあちこちからモテてもはや姫ですね。でもちゃんとがんばってるからいい。
前半のユウトの支えはロブ。どんどんいいキャラになってきた。圧力で捜査打切りになり、悄然とするユウトをもう一度奮起させようとかける言葉とか、どんなけすてきなんだと。ディックを思うユウトにフラれてるのに思いやりに溢れてるよ……というか、けっこう博愛精神に満ちた人物なのかもなあ。理性と自制がききすぎるほどきいている。
「俺を思い留まらせようとするのは、学者としての好奇心から?」
「それもあるけど、一番の理由は君が好きだから」
ユウトは首を振った。
「矛盾してるよ。俺がディックのことを忘れるのは、歓迎すべき出来事じゃないのか?」
「そうだね。君がディックを忘れて、俺のことを好きになってくれればすごく嬉しい。だけど、それ以上に君には負けてほしくないんだ。ここまで必死で頑張ってきた君が、自分の信念を曲げて逃げだす。そんな姿は見たくない。俺が好きになったのは、自分の気持ちに正直になって、まっすぐに生きようとする君だから」
ロブは子供にするように、ユウトの頬を軽くつねって微笑んだ。
「もう少し頑張ろうよ」
「ロブ……」
「俺は夢見がちな男なんだ。好きな相手には、いつだってキラキラ輝いていてほしい」
ロブの芝居がかったセリフが可笑しくて、ユウトは吹きだした。
「本当に君ってひと言多い」
ロブは傷ついた表情で肩をすくめた。
「今のは真剣に言ったんだぞ。笑うなんてひどいよ」
ロブしあわせになってほしいー。その後が心配になって情報収集したところ、同人誌で衝撃の(笑・でもないか、この本で前フリされてたもんね)ネト×ロブを経たあと、ディックの友人のボディガードと幸せになれる?みたいでほっとした。
中盤はコルブス。シリーズ通しての敵らしく、変に姑息だったり揺らいだりしないところがよかった。コルブスの生い立ちや素性のところは一番真剣に読んじゃったもんね。その壊れ具合、何もない心の中で核となるもの、刑務所で感じたこと、…最終巻でちゃんとコルブスの人格も掘り下げようとしてるのがわかった。
ユウトにとっては悲惨でしかなかった刑務所暮らしでも、コルブスの苛酷な人生の中では、もっとも平穏な日々だったのだ。
とか。DEADLOCKからちゃんと繋がっている。最後のシーンも……ユウトにああ言ってもらえて、救われたんだろうかな。コルブス=三木さんなんだよね、すごい合ってる、聞いたらかなりキそう。しかし眼前で最愛のユウト→仇のコルブスへのあんな言葉を聞かされたディックはどう思ったんだろうか。そういう意味では、ディックの気持ちが一番わかんなかった気もする。離れてるし、一人称の限界か。
終盤のディックとの再会。もうね、表紙と本文の間、巻頭カラーが2枚あるうちの2枚目が、二人が砂浜で寄り添って歩いてるあまりに美麗で穏やかな光景なわけですよ。いったいいつそこにたどり着くのか!とユウトと一緒にゼエハアしつつ。ロブにトキメいたりコルブスに萌えたり、紆余曲折を経て、ディックが意地っ張りのばかなので最後までハラハラしました。巻頭のカラー絵はユウトの願望のサービスショットかと思っちゃったよ。ちゃんと海にたどり着けてよかった。苦しいときにユウトが一人孤独に朝日を眺めて祈ったことや、夢でディックに呼ばれて行こうとしたけど目が覚めたこと、それが全部繋がって解消されて、じんわりきた。爽快感…とは違うな、幸福感かな。表現もうまい、ユウトはかわいいし(また!)。ディックはよくわからんが、普段スカしてるわりにかわいいとこもある、ははは。そんなこんなでシリーズ3巻すごーく楽しめた!ラストの締め方もとてもいい!人気があるにはあるなりの理由があるんですねー。
そうそう、初版のせいか、最後のほうで誤植があった。P216、バスの中での「ユウト」が「ディック」になってる。P245、「クラクションを三回慣らし」。気が抜けたのかなw
感想もいい加減長いので終わる。あとちょっとで終わる。
タイトルの付け方も内容と合っていて、潔ぎがよくて好きでした。
<タイトルの意味>あとがきより
- デッドロック=直訳すれば「膠着状態、行き詰まり」だが、IT用語では「複数のプロセスが、互いに相手の占有している資源の解放を待ってしまい、処理が停止してしまうこと」。
- デッドヒート=日本では、「白熱したレース、接戦」だが、本来の英語では「同着、引き分け、勝負がつかなかった試合」。
- デッドショット=命中弾。
最後にデッドシリーズ番外編メモ。