薔薇色の人生/木原音瀬
- 作者: 木原音瀬,ヤマシタトモコ
- 出版社/メーカー: リブレ出版
- 発売日: 2008/07/18
- メディア: 単行本
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愚かな生き方のせいで、家も家族もなくしてしまった百田。生きていても仕方がないと自殺しようとした時、偶然通りかかった警官に制止される。生真面目な正論に腹を立て、その警官・浜渦に「抱かせろ」と無理難題をふっかけるが、彼はすべてをなげうち、百田を救ってくれた。彼のために生きることを誓う百田だったが…。ひたむきな恋がすべてを変えていく。大人気のモモ×ロンちゃんシリーズ!
6年前からの2人のできあがるまで&できあがってからのあれこれなんですが、モモもロンちゃんもいいよ、かわいいよ。これあんま話題になってないけど、人気あるよねたぶんね?木原作品を手に取るにはえいやって、今だって気合いが多少必要なんですが、読んだ漫画の流れでヤマシタさん挿絵だからーとこれを手に取って正解だったかもしんない。話と絵が非常にしっくりきてる。ergoにこれのコミカライズがなかったのが残念だよ。モモが外見上ぶさいく設定なんだけど、非常に愛らしくかわいく描かれてて説得力があるんだよなー。ロンちゃん視点の話「年上の恋人」も、同僚刑事・甚呉さん視点の話「後輩の恋人」も好き。「年上の恋人」で、ロンちゃんがちゃんとモモにほだされてく過程がわかってすっきりする。モモもたいがいおばかだけど、ロンちゃんもどっかズレてて変な子なのがいいのです。やっぱこういう、角度・見る側を代えて2人の間にある関係性が描き出されてるのを読めるっていうのは幸福です。それが木原さんほどの名手であればあるほど。そういえばこれってb-boyの不細工特集(http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20070519#1179591462)に載ってたやつなんですよねー、ぜんぜん印象が違ったことを考えると、やっぱ表題作のインパクト・作りこみ方がすごいんだと思う。いつどっちかが死んだりひどいことになったり、またはロンちゃん側に実はとんでもない事情があってモモが利用されてていつ裏切られたりするのかと思ってどぎどぎしながら読みすすめてたんですが(どんなけ木原作品に疑心暗鬼なんだw)、そんなことはなかったですにっこり。まあ、893の手にかかって死にかけたりはしますけどね(笑)。マニからの話とかもまだまだできそうだからもっと読みたいなー。とにかく楽しい読書でした。2人がだいすきになった。木原作品でこんなに楽しい気持ちになったの初めてかもしれない。
途中でロンちゃんに言葉を奪われた。
「頭が悪くて、顔が悪くて、高校中退で、ゾクにも入ってて、前科三犯だから嫌だと、僕は一言でも言ったか!」
「けっ、けど……」
「言ったか言わないか、それだけで答えて」
まるで子供みたいに怒鳴られて、小声で、「……い、言ってません」と答えた。自分が口にした言葉に、百田はハッとする。ロンちゃんは、お前は前科者だから、頭が悪いから嫌だなんて一度も言わない。
(中略)
「百田保男さん」
いつもモモなのに、フルネームで呼ばれた。
「僕が六十になって退職したら、結婚してください」
(中略)
子供みたいにしゃくり上げる。ロンちゃんはベッドサイドにあったティッシュを鷲掴みにすると、百田の顔に押し当てた。
「モモ、泣かないで……」
「なっ、なんでそんなこと言うんだよっ」
「ずっとそばにいるのが、僕では嫌か」
「んなワケねえだろっ」
頭をそっと抱きかかえられる。ふわりとロンちゃんの匂いがした。
「僕のことが好きなら、もっと自分を大切にしてくれ、モモ。自分は駄目だなんて言わないで。お願いだから……」
子供みたいに、ただ溢れる涙を拭い取られる。