重力ピエロ

原作感想→ http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20031227#p1(初期の頃の感想&初めて読んだ伊坂作品なんで点数が辛いですね;そして感想も短いや)


「二階から春が落ちてきた」始まり方が秀逸でした。映像化としてはかなり完璧じゃないでしょうか。
原作の結末を読んだときに、うわあ思いきったことしたなあと思ったんですよね。どう捉えていいのか、兄弟の決心と行動を肯定していいものかどうか。秩序やしがらみ(つまりは重力)のあるこの世界に生きる者として。どんな理由があっても殺人はいけないとか、相手と同じところに墜ちてどうする、とか、今までいろんな映画や小説で繰り返し言われてきた理性側の説得に対して、このお話は新たな波紋を投げかける。
一番気に入ったのは神様の声が聞こえた、「自分で考えろって」というお父さんの話と、最後の「神様、黙ってる」「神様も忙しいんだよ」という兄弟の会話の対比。だからこれは、神様に見放された家族が自分たちで考えて選んで生きる話なんですよね。だから誰も言い訳しない。映像になるとより納得感が強くなってしまって困る…。二段ベッドで「レイプグレイプファンタグレイプ!」と言い合って笑う兄弟を見てうぐう…となりました。
重力を振り切って飛んだ弟の話でもあり。それでもやっぱり重力は存在するという意味でもあり。ピエロになって楽しく暮らしていればいつか重力から逃れられるんだろうか。深いです。この兄弟が、悲しい目になんか遭わなければよかったのに、と思わずにいられない。言葉で、セリフで、説明しすぎないところがとてもいいと思った。映像化ならではのアプローチだと思うので。
あ、なんで春があんなまだるっこしい連続放火&暗号をしたのかって、原作では確か、殺す前に犯人に反省と促してチャンスを与えるため&お兄ちゃんに気づいて止めてほしかったかもしれない、みたいな話だっけな。だいぶん忘れてるのでまた原作を読み返したいと思います。