ミスター・ロマンチストの恋/砂原糖子


高校三年の千野純直は、成績優秀な生徒会長でテニス部のエース。本当は内気な性格なのだがクールで渋いと女の子に大人気。そんな千野は密かに二年の有坂和志に恋している。有坂を一目見ることが楽しみな千野は、外見はかっこいいのに心は夢見る乙女。有坂もまた千野の不器用さに気付き、惹かれ始め…。

いわゆるオトメン(ただし外見はクマ)が受の話、ゆえに攻がこれといって特徴のない優しくてかっこいい普通の男子高校生。外見クマをイラストで表現するのは限界があったのかなあ、クマがクールで渋いって女子にモテるかなあ?と疑問点もありイメージがしにくかった…。いや、私が乙男受に魅力を見出せなかっただけなのか。そんな乙男を受け入れる攻の包容力はなかなかいいと思いました。かわいい高校生二人のお話。↓の表現が、乙男に惚れる男の心理をよく描写してると思えて好きでした。

(中略)橋を渡ったから破局なんてあり得ないし、馬鹿げている。遥と同じ、自分もジンクスなんて実体も根拠もない眉唾物だろうと思う。
 けれど、もしも──君が、そのくだらないジンクスを気に病む恋人だったなら、別れはこなかったかもしれない。
 頬をうっすら染めて俯き、どうしても渡りたくないと必死で言っていた千野。目にした瞬間、らしくもない甘い気持ちで胸がいっぱいになった。ただそれだけで、たとえようのない幸福感を与えてくれた。
 大切な人、今誰より恋しい人。俺はあなたに恋してるのに。
 出口はいらない。あなたといることで苦しい岐路に立たされたり、迷路に嵌るというならずっと底から抜け出せなくてもいい。
 なのに、どうして俺を退路に追いやろうとするんだよ──
 閉じたドアに凭れ、有坂は長い息をつく。やりきれない気分だった。


ドラマCDにもなってますね。有坂:羽多野渉くん×千野:杉山紀彰さんかあ。視聴部分聞く限りなかなか落ち着いた感じです。http://atis.cc/itemcatalog/atis040/