悪人 ★★★☆

 


芥川賞作家・吉田修一の同名ベストセラーを妻夫木聡深津絵里主演で映画化した人間ドラマ。長崎の外れの小さな漁村に住む祐一(妻夫木)は出会い系サイトを通じて佐賀在住の光代(深津)と出会う。逢瀬を重ねる2人だったが、祐一は世間を騒がせている福岡の女性殺人事件の犯人だった……。監督は「69」「フラガール」の李相日。共演に岡田将生満島ひかり柄本明樹木希林

観てきました。暗くて起伏のない映画だけど、言いたいことはよく伝わってきた。と思ったんだが。原作未読なんで、ちょっとそっちの書評とかインタビューとか読んでみたら自分の感想と真逆のことが書いてあった。私の受け取り方まちがってるかもw まあ、いいか。とりあえず感じたことだけ書いておきます。



  • 地方(九州)の閉塞感の中でうまく生きられず人との関わり方を知らない男と女。前半は登場人物が自分から不幸やどん詰まりに向かってるように見えてどうなのーと思っていた。逃亡とか、浸ってるだけじゃんと。そこには全然感情が動かなかったんだけど、被害者の父親が語りかけた言葉が、映画を見ながら他人事だと思ってるこっちにまで言っているようではっとした。こういう人たちは、本当にいるんだろうなと想像できるリアルさはあった。
  • 結局祐一は、必死に自分の元へ戻ってこようと走る光代の姿を灯台の中から見た時点で救われたんだと思う。首を絞めたのはわざとなんだろうな。自分のしたこと(殺人犯だということ)を、自分と光代に知らしめるため。もちろん光代を被害者に見せかけるため。
  • 最後に光代が殺害現場で、「あの人は悪人なんですよね」と言ったところで、本当に「人を殺す」ということの意味を、実感として悟った…てことでいいのかなあ。どんなに事情や理由があろうと、被害者も悪かろうと、一生懸命生きていようと、人を殺すことはすべてを台無しにする。本当は懸命に生きて誰かと出会いたいと思っていただけでも、人を殺したその一点だけで祐一は充分に悪人であり、誰より本人たちが最後にそれを充分に自覚した。という描かれ方をされていてよかった。