神は沈黙せず/山本弘 ★★★☆

  

「サールの悪魔」この謎めいた言葉を残し、優歌の兄・良輔が失踪した。彼はコンピュータ上で人工生命進化を研究するうち、「神」の実在に理論的に到達。さらにその意図に気づき、恐怖に駆られたのだ。折しも世界各地では、もはや科学では説明できない現象が頻発。良輔の行方を追ううち、優歌もまた「神」の正体に戦慄する―。膨大な量の超常現象を子細に検討、科学的・合理的に存在しうる「神」の姿を描き出した本格長編SF小説。     (文庫版下巻あらすじ)

  • アイの物語(http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20080826#1219743198)の作者さんの別のお話。前から読みたかったし、サイレントレボリューション(税金を払わない革命)が描かれてると聞いて読んでみたんだけど、その部分はちょびっとでした。
  • 神は実在するのか?いるとしたらなぜ悪を正さないのか?ヨブ記のヨブはなぜ改心したのか?世界中で目撃されるUFOや魚の雨など超常現象の意味は?などなど、多彩な角度から神を検証して、中盤で既存の宗教とは違う「神」の姿が浮かび上がります。「この世は神のシュミレーションである」という説は、コンピュータ時代である現代に即した新しい宗教とでも言える解説で、意外と納得度が高かった。それまで膨大な量の事例や資料でじっくり誘導されてるので理解しやすいし。うーん、読んでる間はいろいろと考えたんだけど、感想を書くの難しいな…。「人は真実だから信じるのではない、自分が信じたいことを信じるのだ」「まず信念があって、その信念に沿うように都合のいい事実だけを取り上げて結論をつけてしまう」「超常現象に意味をつけたがって、結果、宗教が生まれる」という人間の側面がさんざん描かれたあとで、最後の最後に「シュミレーション説」さえも覆ってしまう展開は爽快でした。ほんと、意味なんてないのかもしれないなあ。
  • 加古沢のキャラはちょっとひろゆきを思わせたりもして、けど目指してた目的がそんなことなのかーってざんねん。お兄ちゃんの説のまじで信者だったってことだよねー。一番好きだったのは大和田おじいちゃんのくだりかな、まともな人だったから。
  • 前半でシュミレーション説に時間をかけた分、最終的な「神の存在」の結論がわかりにくかったんだけど、要するに地球は人体内部で起こってることの巨大版ってこと?人間にとっての体内の細胞や神経レベルの活動が、神にとっての地球上の人間の活動。細胞や神経いっこいっこは自分の身にふりかかる現象の意味なんて知らないけど、人間はその総括的な働きにより動いている(脳のメカニズムは解明されていない)。同じように、個々の人間は超常現象が何を意味するかわからないけど、それは当然で、地球全体でまとまったときにそれは別個の「神」という存在になる。意味なんかない。兄はその説を巨大なコンピュータのアルゴリズムで証明し、応用して記号着地問題をクリアしたAIに応用したってことで。
  • 難しかったけどなかなか興味深かったです。