バイバイ、ブラックバード/伊坂幸太郎 ★★★

「理不尽なお別れはやり切れません。でも、それでも無理やり笑って、バイバイと言うような、そういうお話を書いてみました」(伊坂幸太郎)。
太宰治の未完の絶筆「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、まったく新しい物語。1話が50人だけのために書かれた「ゆうびん小説」が、いまあなたのもとに。

「あのバス」に乗せられることになった星野一彦は、破天荒な巨女・繭美に監視されながら、五股で付き合っていた女性たちにバイバイを言いに会いに行くことにする…というあらすじ。1話ごとに50人に読んでもらった、という連載形式がよくわかんないんだけど、話はちゃんと全部繋がって流れていて読みやすかった。ジャンボラーメンはふーんと思いながら読んで。子持ちで当て逃げされた彼女の話は、子どもとの会話がよかった・不知火刑事は刺さらなかったw 泥棒ロープの彼女は現実味ないんだけどすかっとしてたので中弛み解消できたかも。数学好きで癌疑惑の彼女の話は、番号札のオチがきれいだなー!とまんまとつかまれた(遅い)。確かに病院で番号もらうしね。女優さんの話も好き。「パンになる!」って言った近所の幼稚園児の話が微笑ましいなーいいなーと思ってたらそれがラストにも繋がってたし。女優さんがどうして星野に惹かれたのか、よくわかる話だった。あとマネージャーのターミネーターT-1000佐野さんがよすぎて。むしろ佐野さんの話が読みたいよ!
そして、最後は繭美(ずっとマツコ・デラックスで読んだよね…もしくは地獄のミサワ)。繭美との会話は全編楽しかったので、まさか最後で味方してくれるとは思わなかったねー。根底になるはずの設定、「あのバス」、それにまつわる事情ってのが最後まで明かされずにふわっふわしてるんで、読後感がふわっふわしてるのはそのせいだと思う…。現実味がないというか腑に落ちないというか。最後の章でそれをちゃんと説明して解決してくれたら更によかったのになー。でもラストの二行かっこよす。タイトルも好きな感じで、結局ブラックバードが誰・何だったのか考えたりすると楽しい。
伊坂さんの本はそういうの多いんだけど、主人公が星野だから各話の区切りのカットに頭が★な男のカットが使われてて、それも可愛かった。
伊坂さんについては、たぶんみんなハードルが上がりまくってると思うから大変そう。私もなるべくフラットに読もうと心がけてはいるんだけど、今回はそれがちょっと難しかった、反省。新しい作家さんを読んでみるのもいいかもしれない…。

更新しといた→ 伊坂幸太郎作品リンク+感想リンク http://d.hatena.ne.jp/noraneko244/20080425#1209110254