あなたへ



とてつもなく地味な映画だけど、最後まで退屈することなく観れました。面白かったんだと思う。

  • あの世代の方の人との接し方、会話の継ぎ目・空気、今の私の回りにはないものだから無性に心に引っかかって、これは盛り上がっているの?仲良しなの?どんな気持ちなの?ということを表層から読み取れるまでにちょっと時間がかかった。特にビートたけしとのおじさん同士のコミュニケーションは、見知らぬ他人とのコンタクトの取り方としてひやひやしたりにやにやしたり。不器用なおじさん…たまらん。
  • 長崎くんだりまで行って、局留め郵便の最後の手紙を読んでみたらたった一言そっけなく「さようなら」。飛び立っていく鳥。たぶん旦那さんはもしかしたらそこに暖かい愛の言葉や感謝の情を期待していたかもしれなくて、あのあっさりさ加減はショックだっただろうなあとw そのへんがこの夫婦の性格の違いというか、無性に小気味いいところでした。だって、刑務所に入るような男を愛して慰問のフリをして歌を歌いに(会いに)きていたような熱愛で情熱的な女が、倉さんのような優しくてまじめだけど面白味のなさそうな男と、だけど人生の最後の期間15年を一緒に過ごすことにして。そこにはどんな思いがあったんだろうと考えると。ちょっと罪悪感がありつつも、あたたかな気持ちに触れて静かな場所で、しあわせだったんだろうなあ。しあわせだったことに、また言い知れないせつなさがあっただろうなあ。
  • つよしのたなべくん!よかったね。あのとぼけた強引さが映画をぱっと明るくした。そうそう、私が見た映画館は連休初日でご年配の夫婦が多い感じ?だったんだけど(あの劇場で左右を年配夫婦に挟まれて映画観たのなんて初めてだよw)、たなべくんのシーンと、綾瀬はるかちゃんの若い夫婦のシーンで一番くすくす笑いが起こっていて、ああ年配のご夫婦は若者に向ける目線がやさしくて、若さというものに生き返る心地がするものなんだ、と体感できたのも面白かった。
  • なんばらは、そうなんだろうな、と思っていたのがそのままだったので驚かなかったんだけど。倉さんはどこで・何でそれに気づいたんだろうか。そのシークエンスあった?刑務官熟練の勘?そのことの方が気になった。自分を殺して大人ぶっていたなんばらが、最後倉さんの前でちょっとだけ焦った顔を見せて、何かを伝えたい聞いてほしい、という表情になっていて、ああ生き返ったんだなあと思った。たなべとなんばらはこれからいいコンビとしてイカを売っていけばいいよ。浪漫だよ。
  • 手紙を投げるシーンは、奥さんのことをわからない自分、ってことをちゃんと吹っ切れた・受け入れてもやもやするのをやめた、って意味だと思ったんだけど、さすがにどきっとした。散骨よりどきっとした。倉さん退職届送っちゃって、これからどうするんだろう。ケリがついたのはわかったけれど、あのあとの過ごし方・生き方というのが私の歳だとまだ想像できないなあって思った。
  • 毎日一緒に暮らしながら相手のことを完全にわかることなんてないのに、それでいいんだってのが夫婦なのかなと。ほんと、なんなんだろう。